ASAKADAI ANIMAL MEDICAL CENTER

[ 病気のお話 ]

眼科疾患 前のページへ戻る >>

眼科疾患には充血や眼脂(めやに)、羞明(眼をショボショボさせる)等の気がつきやすい症状もありますが、夜盲などの視覚障害は動物が訴えることができないために、気づくのが遅く治療が困難になってしまう場合があります。
診察、検査の結果から適切な診断を下し、それに応じた治療を行う事が必要です。
眼科疾患の診察、検査、代表的な疾患の治療についてお伝えします。
問診・身体検査
充血・眼脂・羞明・流涙などの症状の有無、睫毛・瞼・眼球などの形態、物が近づいてきたときの反応(威嚇反射)・光を当てたときの反応(眩目反射、対光反射)などの視覚状態を確認します。また特定の眼科疾患は、遺伝性や身体の形態による好発犬種、発症年齢が知られているものがあるため、品種や年齢を確認します。
検 査
  • 血液検査
    全身性の疾患として、眼科症状がでてくることもあるため、全身の血液検査を行う場合があります。また、眼科疾患の背景として基礎疾患があるかどうか確認する必要があります。
  • 眼科検査
    レントゲン検査 スリットランプ検査
    眼科検査の多くは視診により情報が得られます。より詳細に検査をするためにスリットランプ(検眼機)を用いることで、広い光による前眼部(眼瞼、第三眼瞼、結膜、角膜、強膜、虹彩)、の検査や、スリット光による中間透光体(角膜、前眼房、水晶体、硝子体)の検査、コバルトブルーフィルターによるフルオレセイン染色の発色により、角膜潰瘍を調べることができます。
    レントゲン検査 フルオレセイン染色
    角膜は上皮、実質、内皮の3層で構造されています。上皮の細胞同士はしっかりと接着することで、角膜表面からの異物の侵入を物理的に防御しています。フルオレセイン染色は、上皮の欠損部や上皮の細胞間の接着が弱いところに浸透する性質を利用した、角膜潰瘍(角膜の傷)を調べる検査です。また鼻涙管の開存や涙膜層の状態を調べることもできます。
    レントゲン検査 眼圧測定
    角膜と水晶体の間の前眼房と言われる領域は房水といわれる液体で満たされています。房水により眼は圧力・形態が保たれています。眼圧測定は、房水の排水が傷害されて眼圧が上がってしまう緑内障や眼の炎症により眼圧が下がってしまう、ぶどう膜炎を調べる検査です。
    レントゲン検査 眼底検査
    眼の一番奥には眼の中を通過してきた光を電気刺激に変換する網膜、視神経に伝達する視神経乳頭などがあります。眼底検査は、視覚の低下を招いてしまう網膜剥離や進行性網膜変性などを調べる検査です。
    レントゲン検査 涙液量検査(シルマーティアーテスト)
    眼の表面は、脂質、液体、粘液からなる涙の膜で覆われています。この涙の膜によって細菌などの刺激から眼は守られています。シルマーティアー試験紙は、結膜に貯留している涙液量を測定し乾性角結膜炎(ドライアイ)調べる検査です。
  • 超音波検査
    超音波検査は、眼球内の出血などにより眼に光が通らず、他の検査が困難な場合に、眼内の腫瘤性病変や網膜剥離などを調べる検査です。
  • 細菌培養・薬剤感受性試験
    難治性や再発性の膿性眼脂を採取し、培養し感受性試験を行うことで、どの抗生物質が有効であるかを判定します。
代表的な病気
  • 角膜潰瘍
    角膜は血管の無い透明な膜で、眼の中央を覆っています。その角膜に傷が付いた状態を角膜潰瘍といいます。角膜潰瘍の原因には外傷、擦過などの直接外から受けた刺激や、涙の異常や不足などの眼の保護能力の低下などが考えられます。症状は充血・眼脂・羞明・流涙などがあり、強い炎症を伴うと角膜自体が白濁することがあります。
    角膜の傷はわかりにくいため、フルオレセイン染色により角膜の傷を染色し診断します。
    内科的な治療には血清点眼や抗生物質・抗炎症剤の点眼、角膜保護を目的としてコンタクトレンズの装着を行います。難治性の場合は外科的な治療として、瞬膜被覆術や眼瞼縫合、結膜有茎転位術を行う場合があります。

    フルオレセイン染色前

    フルオレセイン染色後
  • 結膜炎
    結膜は半透明な膜で、眼瞼から角膜輪部を覆っています。その結膜に炎症が起きた状態を結膜炎といいます。結膜炎の原因には、物理的刺激、感染症、涙の異常や不足、腫瘍が考えられます。症状は充血・眼脂・羞明・流涙・浮腫があります。角膜潰瘍との鑑別にフルオレセイン染色やぶどう膜炎との鑑別に眼圧測定を行い診断します。
    猫のヘルペスウイルス性結膜炎
    結膜炎は猫の眼科疾患の中で最も多く、その多くはヘルペスウイルスに由来します。子猫の時期に感染し、充血・浮腫などの結膜炎やくしゃみ・鼻水などの鼻気管炎を発症します。治療には抗ウイルス薬やインターフェロン、サプリメントを用います。また細菌感染が続発している場合が多く、抗生物質も併用します。しかし完全にヘルペスウイルスを除去することできません。ワクチン接種によるコントロールを必要とします。ストレス刺激により発症することもあるので、生活環境の変化にも注意が不必要です。
  • 眼瞼腫瘤(マイボーム腺腫)
    眼瞼は、結膜と角膜を保護する器官で、涙の成分を分泌するマイボーム腺を内包しています。マイボーム腺腫とは、犬に比較的よくみとめられる眼瞼の良性の腫瘍ですが、大きくなり眼に慢性的に接すると角膜や結膜を傷つけ、流涙の原因となるため治療は腫瘤の外科的切除を行います。マイボーム腺は眼瞼に内包されているため根元の眼瞼の一部ごと切除します。また眼瞼にはマイボー腺腫以外の腫瘍が発生することがあるため、切除した腫瘤の病理組織学的検査も行います。