内分泌科
内分泌科とは、ホルモンの合成・分泌、運搬、代謝、あるいはその作用の異常によって引き起こされる病気を扱う診療科です。
ホルモンとは、甲状腺などの内分泌腺のほか、体内の様々な部位で作られて血液中に放出され(*)、
健康維持のために様々な機能調節の働きをする〝生体内情報物質〟の総称です。ギリシャ語のhormao(活性させる、刺激する)に由来しています。
*血液に放出されず、局所的に働くものも一部あります。
ホルモンはその作用に応じて4つのグループに分類することができます。
1) 成長と成熟の調節・・・ペプチドホルモン[成長ホルモン、インスリンなど]
2) 生殖機能の調節・・・ステロイドホルモン[副腎皮質ホルモン、性腺ホルモンなど]
3) エネルギー代謝の調節・・・アミノ酸誘導体[アドレナリン、甲状腺ホルモンなど]
4) ストレスへの防御・・・エイコサノイド[プロスタグランジン、トロンポキサンなど]
ホルモンを分泌する内分泌系は、
外界や体内の変化に対応して 体液量やミネラルバランスなど体内の環境を一定に保ち、
成長や代謝を調節する働き(ホメオスタシス)を担っています。
主な内分泌線・器官
症状
内分泌系の病気は、はじめのうちは症状が明らかではないことも多く、
「いつもと少し違うかな?」と小さな兆候に気づくことが重要となります。
近年では動物においても高脂肪食や運動不足などの生活習慣により、
糖尿病や高脂血症、肥満など内分泌系の病気が増えています。
下記の症状が見られたら、早めに受診してください。
  • 最近よく水を飲む
  • たくさんおしっこをする
  • 何となく元気がない
  • 食べる量が増えて太ってきた
  • 食べているのに痩せてきた
  • 毛が抜ける、左右対称に脱毛が見られる
  • 下痢、嘔吐
  • 食欲が落ちてきた
  • 攻撃的な性格になってきた
  • 活動性が増してきた
  • すぐ疲れる
診察の流れ
問診・身体検査
脳下垂体、副腎、甲状腺、膵臓、性腺(精巣や卵巣)などの内分泌腺から分泌されたホルモンは血液中に入り、特定の器官系でその作用を発揮します。
内分泌疾患をもつ動物では、そのほとんどにそれぞれの病気に特徴的な臨床症状が現れており、これらの臨症状をよく認識し、該当する内分泌疾患を疑うことが検査のスタートラインとなります。
身体検査
内分泌疾患をもつ動物では、そのほとんどにそれぞれの病気に特徴的な臨床症状が現れており、これらの臨床症状をよく認識し、該当する内分泌疾患を疑うことが検査のスタートラインとなります。
検査
血液検査
臨床症状から内分泌疾患が疑われた場合、確定診断および、その原因疾患や内分泌疾患を悪化させている基礎疾患がないか全身の精査を行います。内分泌疾患においては、完全血球計算や血清酵素、ミネラルバランスなど生化学検査に特徴的な変化が現れることが多く、適切な治療を行うためにも血液検査が必要となります。また、疾患によっては確定診断のため、ホルモン測定や負荷試験・刺激試験などを行います。当院には内分泌検査器があるため、従来、検査結果が出るまで数日を要していた検査が、院内で簡易・迅速に検査を行うことができます。これにより、甲状腺や副腎皮質機能疾患の早期発見・治療が可能となります。
尿検査
多くの内分泌疾患、特に脳下垂体や副腎の疾患では、多飲多尿が多くみられ、検査上では、これらの尿の変動は尿の濃縮度合い、すなわち尿比重(USG)の変動としてとらえられます。また、糖尿病では尿中に糖が検出される他、症状が進行すると血液中にケトンという脂肪の分解産物が増加します。このとき尿中にはケトン体が認められ、昏睡状態になり死に至る場合もあるため(糖尿病性ケトアシドーシス)、迅速な治療が必要となります。このような体内での重篤な変化を見つけるためにも、尿検査は有用です。
画像診断
X線検査や超音波検査により、内分泌疾患の原因や他の疾患がないか精査を行います。必要に応じて、MRIやCT検査によって下垂体や副腎の精査をすることもあります。
代表的な内分泌の疾患
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
犬で最も一般的に診断される内分泌疾患であり、クッシング症候群とも呼ばれます。副腎皮質機能亢進症は、副腎皮質ホルモンの過剰分泌によって起こります。多飲多尿や腹部膨満、脱毛、毛づやが悪くなるなどの症がみられ、また、糖尿病の併発や免疫力の低下など様々な病気につながっていきます。そして、血栓を作りやすい状態になり、時には突然死に繋がることがあります。お家で様子をよく観察してもらい、早期に治していくことが大切です。 この病気には、副腎自体に問題がある場合(副腎腫瘍など)と副腎の働きを調整している脳下垂体に問題がある場合があります。治療法は、検査結果や全身状態を考慮して、適量のホルモン抑制製剤を内服します。症状の改善には通常数週間~数か月かかり、症状が消失した後も内服は生涯にわたって必要です。副腎に腫瘍がある場合は、転移病変や全身状態の悪化がなければ副腎摘出が選択されますが、手術の危険性が高い場合は内服薬によって体内のホルモン量を調節します。
甲状腺機能低下症
犬においてクッシング症候群に次いでよくみられる内分泌疾患です。甲状腺ホルモンは、代謝を司るホルモンで、正常な成長および発育に必須であり、毛周期においても成長期を活性化します。甲状腺機能低下症は、甲状腺の構造的または機能的な異常により甲状腺ホルモンの生産が不足することで起こり、自己免疫性甲状腺炎および特発性(原因不明)甲状腺機能低下症に分類されています。症状として、脱毛、繰り返す膿皮症、体重増加、活発性の低下などがみられます。治療は、検査結果や全身状態を考慮して適量のホルモン製剤を内服します。治療開始後は定期的にホルモン濃度を測定し、適切な血中濃度を保てるように薬の量を調節します。症状の改善には通常数週間~数か月かかり、症状が消失した後も内服は生涯にわたって必要です。二次感染など併発症がある場合はその治療も行います。
甲状腺機能亢進症
8歳以上の高齢ネコでよく見られる、甲状腺ホルモンの分泌が盛んになる病気です。甲状腺機能亢進症の原因は主に甲状腺腫といわれており、良性の過形成です。甲状腺のホルモンが血中に多く循環しているため、代謝が上がり、食欲旺盛なのに痩せていく、性格が凶暴になるなどの症状がみられます。病院で身体検査をすると心拍数の増加、高血圧もみられます。治療法には、内科療法と外科療法があります。内科療法では、甲状腺ホルモンの働きを抑える抗甲状腺薬剤を内服します。外科療法では、腫大した甲状腺を切除します。しかし高齢猫では、過剰な甲状腺ホルモンにより血液循環が保たれ、低下した腎機能を見かけ上はカバーしてくれていることが多くあります。これが長期にわたるこの病気の管理の難しいところであり、まずは薬を投与して、甲状腺の働きを抑えても心臓や腎臓に問題が起こらないかどうかを見ていきます。そして問題がなければ、薬を継続するのかまたは手術に踏み切るのかを決断します。最近では甲状腺ホルモンの原料となるヨウ素を制限した食事が療法食として推奨されてきており、食事のみでの管理が可能な事もあります。
糖尿病
膵臓から分泌されるインスリンの作用不足に基づく代謝性疾患です。インスリンは生体で血糖値を下げる唯一のホルモンで、膵臓で産生・分泌されます。インスリンの作用が不足すると代謝が障害され、筋肉や脂肪組織の糖利用率が低下し、血糖値が上昇して尿中に糖が検出されます。イヌの糖尿病は中高齢のメスに多く、肥満が原因ではなく、免疫介在性疾患や膵炎が原因になっていることが多いです。これに対し、ネコでは、中高齢のオスに多く、肥満が糖尿病の原因になることが多いと言われています。また、他の病気が引き金になって発症することもあるため、基礎疾患の有無を検査する必要があります。症状が重度な場合には入院が必要となり、一日を通して血糖値の測定および調整が必要となります。症状に改善が見られれば自宅での管理が可能となります。その方法は以下のように大別され、これらの組み合わせにより治療していきます。
  • インスリン療法:自宅でのインスリン製剤皮下注射による血糖値コントロール
  • 食事療法
  • 体重コントロール(特に肥満猫)
  • 併発疾患(慢性膵炎、発情など)、 内分泌疾患(副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症など)、 感染症(口腔内疾患、膀胱炎など)、腫瘍などの治療
基本的にはインスリン療法が中心となり、生涯の治療が必要となりますが、非常に経過が良好な場合ではインスリン投与が必要でなくなる場合もあります。当院では一滴の血液で血糖値の測定が可能である検査機器(アントセンス)があり、動物に負担をかけません。
病気のはなし