腫瘍科
腫瘍とは、腫れた瘍(できもの)を意味する言葉で、体にできた細胞のかたまりの総称です。
腫瘍には良性と悪性があり、悪性の腫瘍は無秩序に増殖して浸潤を拡げたり、他の臓器に転移して、生命に危険を及ぼします。
悪性腫瘍、いわゆる〝がん〟は、人と同じく高齢化が進むペットにおいても死因のトップになっています。
腫瘍は体の内外あらゆる部位に出現し、種類や症状は様々ですが、多くの腫瘍に共通する初期症状として「イボ」や「しこり」が見られることが少なくありません。
日頃からスキンシップを習慣にして小さな変化も見逃さないよう注意してあげてください。
症状
悪性腫瘍は種類や進行の程度(ステージ)によっても症状がそれぞれ異なりますが、多くの場合に共通する下記のような初期症状があります。
- イボのようなできものができた
- 皮膚の下にしこりを感じる
- 鼻血を出す、顔つきが変わってきた
- 血尿、血便
- 元気がない、体重も減ってきた
- 嘔吐・下痢・便秘
- 咳をする、呼吸が苦しそう
- 足を痛がる、ふらつく
また、特に以下の点に当てはまるものがあれば、受診を強くお勧めします。腫瘍科までご相談ください。
- 喉が腫れている
- 以前はなかったのに、急にしこりが見つかった
- 以前からあったしこりが、最近急に大きくなった
- 以前からあったしこりが、大きくなったり小さくなったりを繰り返している
診察の流れ
皮膚のしこり、ただの“ イボ” だと思っていたら・・・
「体にしこりがあるけど、高齢だし“イボ” かなと思っていた。」
しかし、実際に病院で検査してみると・・・、悪性腫瘍だったということも珍しくありません。実は、見た目だけでは良性のイボと悪い腫瘍は区別できないのです。
右の写真は、よく探さないと見つからないような、すごく小さなできもので、一見すると皮膚炎や“イボ” のようにも見えますが・・・、実際は「肥満細胞腫」という悪性腫瘍でした。また、脂肪のような触り心地のできものなので、ずっと様子を見ていたものも、実際に調べてみると悪性腫瘍だったということも実は少なくありません。
このように見た目や触るだけでは判断できないような腫瘍はたくさんあります。細胞診検査は、ワンちゃん、ネコちゃんにとっても負担が少なく、腫瘍かそうではないかの診断をおおよそつけることができますので、気になるしこりがあれば早期治療のためにも、ご相談ください。
細胞診(FNA)
採血と同じ細い針を「しこり」にさして、顕微鏡で診断する検査です。動物への負担も少なく、素早く検査できます。この検査だけで確定診断ができ、すぐに治療にうつれる腫瘍も少なくないため、必ず行います。
代表的な腫瘍

イヌのリンパ腫

ネコのリンパ腫

組織球肉腫

ネコの肥満細胞腫

イヌの肥満細胞腫
生検
細胞診で腫瘍が疑わしいが、確定的ではない場合は、病変の一部または全体を切除し、病理組織検査を行い、診断をつけます。他に特殊検査として、遺伝子検査で診断できる腫瘍(膀胱移行上皮癌、前立腺癌)もあります。
ステージング
腫瘍の診断がついたら、その腫瘍の進行度(ステージ)の判断を行います。ステージ分類とは、腫瘍が局所にとどまっているのか、あるいはリンパ節や肺など他臓器に転移しているのかを判断します。治療方針や治療開始後の効果判定に大きく関わってきますので、必ず行います。
行う検査
- レントゲン検査:肺転移の有無
- 超音波検査
- 細胞診(FNA):リンパ節転移の判断

肺転移のレントゲン写真

リンパ節転移の超音波写真

CT画像
治 療
腫瘍の治療には完治を目指すものもあれば、残念ながら完治が難しい場合、できるだけ動物の苦しみをとっていくことが目的になるものもあります。適切な治療を選択し、行うには、
腫瘍に対するしっかりとした知識を持って診断を行っていくことが非常に重要となります。
治療方針
下記2つに大別されます。
- 根治治療:完治を目指す治療
- 緩和治療:完治を目指すのではなく、動物の生活の質(QOL)の向上を目的とする治療
腫瘍の種類、進行度(ステージ)や動物の状態、飼い主様の意向を合わせて、その子に適した治療方針を相談させていただきます。
治療方針
下記3つの方法を単独あるいは組み合わせて行います。
外科療法
手術によって切除する方法です。完全切除が可能な腫瘍の場合、第一選択の治療になり、完治も見込めます。

陰唇部の肥満細胞腫:手術前

手術後(完全切除)
化学療法
いわゆる「抗ガン剤」を使用する治療方法です。リンパ腫など血液系の腫瘍に対して非常に有効です。 抗ガン剤には様々な種類が存在し、投与プロトコールも数多く存在します。治療効果、副作用などはそれぞれ異なるため、お話し合いの上で選択していくこととなります。
*抗ガン剤は副作用が非常に強いというイメージを持たれている方が多いと思いますが、適切に使えば、重篤な副作用はかなりの確率で抑えられます。

当院で扱っている化学療法剤の一部
放射線療法
特殊な治療機器が必要となるため専門の施設でのみ行われている治療ですが、必要に応じてそうした専門施設へのご紹介を行っています。
その他の治療方法
分子標的薬:一部の腫瘍に対して有効であり、かつ副作用が抗ガン剤に比較して少ないというメリットがあります。
早期発見、早期診断のために
腫瘍は人と同様に発見が早ければ早いほど完治を見込めますし、発見が遅くなれば完治が難しくなります。このように同じ腫瘍でも進行度(ステージ)によって治療方針や予後が大きく変わってきます。
*例えば、よく見られる犬の乳腺癌の場合
初期のステージ1~2 では生存期間中央値は28カ月ですが、
進行したステージ3 以上では10カ月と大きな違いがあります。
同じ腫瘍でも発見や治療が遅れ進行すると、生存期間がおよそ3倍も変わってきます。
また、乳腺癌はステージ4までであれば外科手術を行うことにより完治も見込めますが、肺などへの遠隔移転のあるステージ5では残念ながら手術不適応となり、完治は難しく、緩和的な治療を行っていくことになります。
以上のように、腫瘍の治療は初期の段階から始めることが非常に大切で、そのためには症状が出ていないうちから、早期発見することが重要になってきます。まずは、ご自宅でのこまめなグルーミングやコミュニケーションをとり、しっかりと体を触ってあげることが大事です。それに加えて、病院での定期的な身体検査や健康診断をお勧めしております。特に腫瘍ができやすくなる7歳以上の子には年2回の健康診断を推奨しています。
治療開始が遅くなれば、それだけワンちゃん、ネコちゃんの苦しみが増えます。大切な家族のために、気になることがあればお早目にご相談ください。
あさか台どうぶつ医療センターグループには日本獣医がん学会の腫瘍科Ⅱ種認定医が在籍しており、常に最新の知見に触れ、グループ内の診療知識・技術のアップデートを積極的に行っております。「体にしこりが見つかった」「がんと診断されて悩んでいる」など、お悩みのことがあれば、お気軽にご相談ください。
代表的な腫瘍の疾患
腫瘍科の病気についてくわしく解説しています。ぜひご一読ください。