大泉学園どうぶつ病院

練馬区東大泉3-1-7
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知ることは、守ること。
犬と猫のがん
人と同様、ペットも高齢化が進み、長寿の子が増え、「がん」を患う子も増えています。
高齢の犬と猫が死に至る、一番の原因は「がん」です。
「がん」は今やどうぶつと暮らす上で誰もが避けて通れない病気と言えます。
早期発見、早期治療でかけがえのない命を守るために、
そして一人でも多くの飼い主様に関心と基本的な知識を持っていただくために、
このQ&Aページをお役立ていただけましたら幸いです。

「がんになる」とは、そもそもどういうことですか?
すべての生き物の体は細胞からできており、細胞分裂により新旧交代を繰り返しています(新陳代謝)。細胞が分裂する時は、元の遺伝子を複製する形で2つの細胞に分かれていきますが、この時、コピーミスが起きてしまうことがあります。通常、このような突然変異の遺伝子を持つ細胞は体内の免疫細胞(リンパ球)によって淘汰され、健康は維持されていますが、老化などで免疫システムが衰えると制御が難しくなっていきます。こうして淘汰されずに生き残った突然変異の細胞達は勝手に分裂と増殖を繰り返す〝死なない細胞〟すなわち〝がん細胞〟となり、それら組織がかたまりを形成して〝腫瘍(しゅよう)〟と呼ばれるできものになります。腫瘍には良性と悪性があり、悪性の腫瘍がいわゆる「がん」です。腫瘍とは元々がん細胞からできたものですが、悪性の場合がいわゆる「がんになった」と言われる時のがんであり、良性の場合は「がん」ではありません。

「悪性」と「良性」の違いとは?
腫瘍が悪性か良性かは ①成長速度 ②形状 ③転移の有無 を検査して判断されますが、決定的な違いは③です。
悪性の場合は、周囲の組織をどんどん破壊しながら増殖し、血液やリンパ液を介して離れた臓器に転移していきます。気道や胆管など管腔内を通って転移していくパターンもあります。
悪性の場合はまわりの正常な細胞の活動を妨げ、栄養摂取も阻害するため、結果として体力を消耗させ、体自体を衰弱化させていきます。このような病態は「悪液質(あくえきしつ)」と呼ばれ、体重減少となって現れます。
一方、良性の場合は、腫瘍がよほど大きくならない限り、手術で切除することが可能です。
悪性
① 高速でどんどん増殖し大きくなる
② 周りの組織に染み込み、巻き込んで大きくなる(浸潤)
③ 他の部位や全身へ転移していく
良性
① 成長が遅い
② 周りの組織を圧迫する形で大きくなる
③ 転移しない

犬と猫のがんにはどんな病気がありますか?
がんは全身のあらゆるところに発生します。皮膚にできるものもあれば、肝臓や腎臓など内臓にできるものもありますし、血液のがんもあります。犬と猫によく見られるがんは次のとおりです。
  • リンパ腫
    血液のがんに分類される、全身性のがんです。悪性リンパ腫とも呼ばれます。
  • 肥満細胞腫
    犬に発生するがんで、肥満細胞という名の免疫系の細胞のがんです(身体の肥満とは関係ありません)。
  • 乳腺腫瘍
    避妊手術を受けていない犬猫に多く発生し、犬の場合は半数が、猫の場合はほとんどが悪性(がん)です。
  • 組織球肉腫
    免疫細胞の司令塔の役割を担う樹状細胞由来のがんです。悪性度が高く、急速に進行・転移します。
  • 軟部組織肉腫
    犬の体表にあらわれるしこりで発見されることの多いがんです。
  • 骨肉腫
    骨から発生するがんです。大型犬に多く発症し、生存率が低いことで知られています。
  • 精巣腫瘍
    去勢手術を受けていない犬に多く発生し、悪性(がん)は全体の2割以下程度です。

どんな症状に気づいたら受診?
どうぶつは不調の自覚を訴えることができませんし、隠そうとする本能も働きます。また人間の何倍ものスピードで年をとるので、病気の進行が早いがんの場合は特に手遅れになるケースが多く見受けられます。現在の動物医療において、がんを早期発見する手段は健康診断しかありません。年に一度、必ず健診を受けてあげてください。高齢になったら、半年に一度のペースで健診を受けてあげてください。そして次の健診までの間も下記のチェックポイントに注意して様子を見守り、該当項目が1つでも見つかったら様子を見ずに直ぐに受診してください。がんの場合、「様子を見る」は手遅れになってしまう危険性が大です。
Check
  • いつのまにか体重がちょっと減っている
  • 以前に比べて食欲が旺盛でなくなった
  • 皮膚にしこりのようなものがある
  • お腹の調子が何となく悪そう、たまに吐く
  • お腹が膨らんできたように感じる
  • 元気がなく寝ている時間が増えた
  • 体にふれられるのを嫌がるようになった